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【柳井祥緒の構想ノート】脚本の書き方2「登場人物と付き合う」

十七戦地・脚本、演出担当の柳井です。
最新作『獣のための倫理学』の脚本がどのような過程を経て生まれたのかをつづるドキュメントの二回目、
テーマは「登場人物と付き合う」です。
ドラマとは葛藤であり、葛藤とは登場人物が抱えている事情と現実のぶつかり合いです。
登場人物の抱える問題を疎かにしてはドラマが生まれません。
そしてその問題を知るためには、実在の人物と同じように、登場人物たちと付き合わなければなりません。
というわけで具体的に、作品に沿って、柳井がどのように登場人物と付き合うのかを見ていきましょう。
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【誰が登場するのか】

物語は二つの方向から作ることが出来ます。
一つは登場人物を作り、その人物を起点に物語を生み出す道。
もう一つは物語を先に作り、それに合った登場人物を生み出す道。
『男はつらいよ』シリーズは前者の比率が、推理小説などは後者の比率が大きいと思います。
柳井の場合はまずプロット(筋立て)ありきなので、物語→それを成立させる人物、の順に考えていきます。
ハリウッド脚本術やストーリーメーカーに出てくる概念ですが、
登場人物には大きくわけて3~4つの役割のパターンがあります。
一人芝居、二人芝居の際は工夫が必要ですが、
基本的に役割一つにつき一人、登場人物がいると考えるのがとっかかりとして最適です。
具体的には下記の通りです。
A・主人公……物語の中心人物で、始めから終わりに掛けて内面が大きく変わっていきます。
B・反主人公……主人公と真逆の人物です。
シャドーとも呼ばれ、価値観や立場が主人公とは異なるため、葛藤を生み出すキーパーソン。
物語が進むに連れ、実は根っこの部分が主人公と同じだということがままあります。
C・賢者……メンターとも呼ばれ、主人公を助け、導く役割です。
賢者という名称ですが、別に偏差値が高い必要はありません。
D・助手……バディとも呼ばれ、主人公の側にいて支える役です。
基本的に主人公の価値観を肯定する役割を担います。
反主人公と賢者、賢者と助手は一人の登場人物に担わせることも出来ます(だから3~4)
このパターンにそって主人公は誰にするか、反主人公はどんな人物かを試行錯誤します。
今回は実際に主人公を作る過程をみてみましょう。
まず名前と立場を決めます。
『獣のための倫理学』主人公の一番初めのラフな設定はこんな感じでした。
名前……市川駿夫
立場……犯罪事件の犯人の甥
この二つを決めたら次は外面と内面を作っていきます。
【主人公の内面と外面を作る】
主人公の内面(性格や思想など)と外面(職業や年齢、家族など)を決める作業には
大塚英志考案の「ストーリーメーカー」を使わせてもらってます。
ストーリーメーカーとは物語の方程式のようなもので、
質問に答えていくだけで簡単に、誰にでも物語が生み出せるシステムです。
文学界からは激しい批判にさらされたようですが、僕は毎回本当に助けられています。
質問の内容は主人公の内面に関するものが大半なので、主人公作りにはもってこい、
また物語の構造を確認することが出来てお得感満載です。
どのような質問があるのかは実際に『ストーリーメーカー』(アスキー新書)をお読み頂くとして、
実際に決まった内容の一部を並べてみましょう。
●「主人公の現在について」→普通の人生を歩んできたが、自分が殺人犯の甥であると知り、責めを負わねばならないのではないかと葛藤している。
●「主人公の現在に最も影響を与えた出来事は?」→人の役に立つ仕事に就きたくて警察官になろうとするが、なぜか母親(犯人の姉)に猛反対された。
●「主人公の行動にタブーを設定する?」→勘やフィーリングに頼らない、被害者面しない、この旅の果てに安寧を求めてはならない。
市川さんはどうやら誠実で健気ないい人のようです。
さらに内面を掘り下げましょう。
【インタビューをする】

内面と外面の大枠を作ったら、登場人物にインタビューを行います。
やり方は簡単で、登場人物の姿を頭の中に思い描き、質問をしていきます。
架空の人物だからといってマナーのない態度をとってはいけません。
初対面の時は自己紹介や免責事項を伝えたり、
夜中にインタビューする時は「夜遅くに申し訳ありません」と断ったりします。
インタビューの利点は登場人物の心に沿った物語が見えてくることです。
そうすると、カードで物語の縦軸と横軸を組み合わせた時に見えてきた穴が埋まっていきます。
また主人公から設定についての異議なども提案されます。
例えば一回目のインタビューではいきなり、「職業なんですが、児童相談所の職員である必然性はありますか?」なんて訊かれました。
結果、物語と結びつくような職業に変更、それに伴い「立場」を「犯人の甥」から違うものに変えました。
【変化に耐える】
このように外面・内面の設計とインタビューを繰り返し、登場人物の設定を練っていきます。
大切なのは変化を恐れない、変化に耐える余裕を持つことです。
初めは「市川駿夫・犯人の甥・児童相談所の職員」だった主人公も、
執筆開始時には全然異なる名前と立場、職業の持ち主になっています。
主人公がどんな人物になったのか。
ぜひ劇場へ足をお運び頂き、実際に観て確かめて頂きたいです。
次回は最終回「本を読む」、お楽しみに。しーゆー!
柳井祥緒

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