『花と魚』構想ノート開封・その1「世界を作る」
こんにちは、十七戦地の脚本・演出担当の柳井です。
「『花と魚』構想ノート開封」と銘打ちまして、
不定期・三回にわたり今回の演目『花と魚』がいかにして誕生したのか、
その一端をご紹介しようと思います。
というわけでジャン!こちらが『花と魚』を構想する際に使用したノートです。
タイトルは「17cmノート2」となっています。
どうも「1」が存在したようなのですが、紛失したのか見当たりませんでした。
しかし「2」とは言うものの、内容は『花と魚』の第一歩目を踏み出したところから始まっています。
一ページ目をめくると一行目にこんな文章が。
「元UMAハンターの青年が町おこしに関わる中、
正体不明の怪物の襲撃に会い、その謎を追って冒険した末、UMAとなる物語」
……UMAとなる? どういうことでしょうか。
さっぱり意味はわかりませんが、この文章の下には「酒田家」の家系図が書き込まれています。
『花と魚』の主人公・酒田七生は、
構想初期の段階では村の旧家の末っ子長男で、しかもUMAハンターを志していたようです。
「元UMAハンター、現行政局職員」というメモもあります。
なんだかちょっと痛い子ですね。
実際はどんな設定に落ち着いたのかは、ぜひ劇場にてご確認下さい。
さらにページをめくると「大潮町坂根地区」と題し、
物語の舞台となる町の詳細が綴られています。
評論家の大塚英志氏は物語作家を才能別に二つに分けています。
一つはプロット(筋書き)の作成を得意とするタイプ。
もう一つは世界観(舞台設定)の作成を得意とするタイプ。
現在の作家の卵には後者が多く、優れた物語舞台を作れるのに、
肝心のお話が書けないと著書で指摘していました。
才能があるかはともかく、僕も後者に属しており、
まず物語の舞台となる町なり村なりの設定から決めるようにしています。
村の誕生から発展、衰退までの歴史をはじめ、産業や文化、伝わる神話、特産品など。
ある程度イメージが掴めたら今度は地図を描きます。
ぼんやりとしたイメージをビジュアルとして把握していく。
そうしてそこに暮らす人々の姿を想像し、登場人物と出会っていくわけです。
ノートを見てみましょう。
坂根地区は三方を山に囲まれ、南に海を擁していること、
西と東に旧家があり村を二分するように対立していることが分かります。
この設定は決定稿に致るまで踏襲されているので、
やはり僕は「初めに世界ありき」タイプの作家のようです。
このように物語の舞台の大枠が出来上がったら、
次はそこに暮らす人々と、彼らの歩んだ人生、つまり歴史を考えます。
構想初期の段階では元UMAハンターの他にどんな人が登場する予定だったのか。
次回のノート開封の際にご紹介しようと思います。
それでは今回はここまで。しーゆー。
この記事へのコメントはありません。